マイホーム購入の登記手続きを司法書士に依頼せず自分で出来るか?

登記手続き

更新日:2021-07-15
マイホーム購入の際の登記手続きを、登記費用の負担者である買主が、司法書士の報酬を削減するために買主自身で手続き出来るかを説明いたします。

結論としましては住宅ローンが絡まない中古不動産の現金購入の場合には出来なくもないが、結局最終的には司法書士に依頼することになる可能性が高いでしょう。

本稿ではその理由を深堀りします。

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新築の場合

建築中建物

新築の建物の場合には司法書士事務所(土地家屋調査士事務所も)につき建築業者(ハウスメーカー)や売主不動産業者の指定事務所で手続きする旨の特約が付されていることが多々あります。

ケースに応じて説明します。

分譲マンション

新築の分譲マンションであれば実務上99%デベロッパーの司法書士事務所の指定の特約が付されております。

そのため買主さんご自身で登記申請の手続きをすることは出来ません。
またデベロッパー指定の司法書士事務所以外で手続きすることも出来ません。

戸建て

新築の戸建の場合、それが建売住宅なのか注文住宅なのかで手続きが少し異なります。

建売住宅の場合

建売住宅ということは、土地及び建物の売主が不動産業者です。

建売住宅の場合は、不動産業者によりますが、『司法書士(土地の所有権移転登記、建物の所有権保存登記)及び土地家屋調査士(建物表題登記)については売主指定の事務所で手続きをする』旨の特約が売買契約に付されていることが多いです。

そのためそういった特約が付されていなければ、建物表題登記、土地の所有権移転登記、建物の所有権保存登記をご自身で手続きすることが可能ですので売買契約書をご確認ください。

また契約の内容によっては、土地家屋調査士の建物表題登記の費用は売主業者が負担するケースもありますのでそちらもあわせてご確認ください。

注文住宅の場合

注文住宅の場合には、土地購入時の手続きと建物完成時の手続きに大きく分けて二つに分かれます。

土地購入の際の登記手続き

土地購入の際は、売買契約で司法書士事務所の指定の旨の特約がなくかつ、現金で土地を購入する場合にはご自身で手続き可能です。

この場合、所有権移転登記等をご自身で申請する形になります。

ただし、不動産に抵当権等の担保権が設定されている場合には、売主側が費用を負担する登記(住所変更登記、抹消登記等)については司法書士に依頼しましょう。

建物竣工(完成)後の登記手続き

建物竣工後には、土地家屋調査士による建物表題登記を経て、司法書士による権利の登記(土地の住所変更登記、所有権保存登記、抵当権設定登記(住宅ローンを利用する場合)等)が必要になります。

①土地家屋調査士による建物表題登記

建物表題登記を業として代理出来るのは土地家屋調査士です。

表題登記とは土地や建物の現況を公示する登記でして、土地を分筆した際や、建物が新築された後に物理的現況を登記するために行われます。

この土地家屋調査士については工務店やハウスメーカー等の指定の土地家屋調査士事務所で手続きする旨の特約が付されていることが多いです。

そのためハウスメーカー等の建築請負契約書を確認しましょう。

指定の旨の特約がない場合には、ご自身で手続きをすることが問題なく可能です。

➁司法書士による権利の登記

権利の登記を業として代理出来るのは司法書士です。

権利の登記とは土地や建物の所有者であることを証明するために所有権を公示したり、抵当権等の担保が付いてないかを公示するために行われます。

表示の登記と違い、権利の登記は義務ではなくあくまで対抗要件ですが、実務上100%権利の登記も手続きします。

注文住宅の場合には、通常

1.土地の住所変更登記(新居に住民票を移した場合)
2.土地の抵当権の債務者の住所変更登記(住所を移した場合) ※債務者の住所変更登記は金融機関にもよるがしないことの方が多い
3.所有権保存登記
4.抵当権追加設定登記 ※土地購入時に抵当権を設定している場合
5.抵当権新規設定登記 ※建物竣工時に住宅ローンを利用する場合

が必要になります。

土地購入時にも、建物完成時にも住宅ローンの借り入れを一切しないのであれば、ご自身で手続きすることが可能です。

住宅ローン利用の有無

住宅ローンを利用する場合は、権利の登記をご自身で手続きすることは出来ません。

理由としては不慣れな素人が登記手続きをしてミスがおき、不動産を担保にとれなかった場合のリスクが非常に高いためです。

冷静に考えて数千万円お金を貸した債務者本人に、銀行の債権の担保を取る手続きをさせたくないですよね。

また所有権保存登記までは自分で手続きするから抵当権設定登記のみお願いしたいといったご相談がありますが金融機関がかなり嫌がるでしょう。

当事務所でもそういうケースはお断りしております。

抵当権設定登記は前提としての登記手続きが全て問題なく手続き出来てはじめて登記の審査に入ります。

そのため不慣れな素人の方が登記を申請してなにかしらの補正があったり、致命的なミスがあった場合には、司法書士事務所側の抵当権設定登記の申請になにもミスがないのに、登記が完了しなかったり却下される可能性があります。

以前お問い合わせがあった方で、買主が弁護士の方で所有権移転登記まで自分で手続きするから抵当権設定登記のみお願い出来ないかというご相談がありました。

金融機関は抵当権設定登記だけは司法書士に依頼してくださいといったことでお問い合わせされたようです。

私共の方では結果、抵当権設定登記のみのご依頼はお断りさせていただきました。

弁護士先生でも登記の専門家ではないため、上記のようなリスクがあるためです。

中古の不動産の場合

マンション

分譲マンション

住宅ローンを利用しない場合であれば、ご自身で手続き可能です。

ただし、売主が不動産業者の場合には、司法書士事務所の指定の旨の特約が付されている可能性がありますので確認が必要です。

戸建て

こちらも住宅ローンを利用しない場合であればご自身で手続き可能です。

こちらも売主が不動産業者の場合には、司法書士事務所の指定の旨の特約が付されていることがありますのでご確認ください。

【結論】自身で出来る可能性があるのは現金購入の場合のみ

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結論としては、住宅ローンを利用しない現金購入の場合のみです。

ただし、仮に現金購入の場合であっても不動産仲介業者はかなり嫌がるでしょう。

仲介業者は想定外のトラブルを嫌いますし、仮にご自身で手続きしてミスをして売主名義のままに登記が残ってしまった場合等、決済が終わっているのに買主や売主との予期せぬ対応に追われることになるからです。

一切責任を負わない旨の念書に調印等すれば手続き出来る可能性はあるかと思いますので仲介業者にご相談してみてください。

現金購入の場合でも自分で手続きできない場合

先述しました通り、

・新築マンション
・契約書に指定の旨の特約

上記の場合にはご自身で手続きすることは不可能です。

売買契約の前に指定の旨を外すような交渉をすることが出来れば手続き出来る可能性は残るかと思います。

土地家屋調査士の建物表題登記の費用は節約できる可能性が高い

注文住宅の場合であって建物表題登記の部分については、住宅ローンを利用先の金融機関がご自身で手続きすることを嫌がることも少ないので、ご自身で手続きすることが出来るかと思います。

建物表題登記の相場が報酬10万円(別途税)というところが多いので、この費用は自分で手続きすれば削減できる可能性があるかと思います。

仮にご自身でやった場合に節約できる金額の相場

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司法書士事務所に登記手続きを依頼した場合には、報酬10万円から20万円弱節約できるでしょう。

報酬以外の登録免許税や登記簿謄本取得代、住宅用家屋証明書の発行手数料等の実費につきましてはご自身で手続きなさっても必ず同額かかるものになります。

そのため司法書士事務所の登記費用の見積もりが総額50万円と言われても大部分が登録免許税ですのでご注意ください。

時給換算

ご自身で手続きする場合には、司法書士事務所に支払う報酬とご自身の時給を考えて手続きするか依頼するか決めた方がよいかと思います。

下記現金購入の場合の自分で手続きした場合にやることになります。

・平日法務局開庁時間に法務局に行き事前相談
・登記申請書の作成
・登記原因証明情報の作成
・売主の権利証が間違いないものか、足りているかの決済日に確認
・売主の印鑑証明書が間違いないものか確認
・売主が真実の登記名義人かどうか確認
・前提としての住所変更登記等が必要かどうかの確認
・実印の印影照合

今回勉強して今後の人生でこの手続きをする可能性はあるか

不動産登記法の勉強が今後の人生に活きる人はほとんどいないでしょう。

勿論
・司法書士試験の受験を検討中
・法務局の職員になりたい
・不動産投資家で年に何回も不動産を現金購入する

等上記に該当する方であれば勉強するメリットもあるでしょう。

税理士報酬を削減するため、確定申告の手続きや法人の決済申告を勉強することには毎年発生することですので勉強する価値があるかと思います。

確定申告等と違い、不動産決済の登記手続きというのは普通の方であれば人生で1、2回という方がほとんどかと思います。

そのため今回の勉強をして今後の人生に活きるというのは一般の方では少ないでしょう。

餅は餅屋

過去にご自身で相続登記等をした方からご依頼があった際の出来事をいくつかご紹介します。

・登記申請書に登記識別情報の発行の旨を希望していなく、売却等の時に本人確認情報作成となってしまい、最初から司法書士に依頼していればかからなかった費用がかかった

・被相続人が自宅に私道持分を有していたのに、私道持分につき登記をせずに結果的に再度相続登記をすることになった

・登録免許税の減税の要件を満たしているのに軽減措置等を受けずに登記して結果無駄な税金を支払った

・個人間売買で当然抵当権を抹消すべきなのに抹消せずに所有権移転登記だけして、抵当不動産の第三取得者となっている

・重要書類で原本還付できる書類をしていなくて、裁判所等に再発行することになった

餅は餅屋ですので、やはり専門事項については専門家に任せる方がいいのではないでしょうか。

なぜ司法書士が実務上不動産取引にほとんど関与するのか?

クエスチョンマーク

中立の立場である司法書士が取引に関与することによって、売主、買主、仲介業者、金融機関にとって安心感があります。

相続登記や住所変更登記等の利害が関係しない登記なら別ですが、不動産売買に関しては仲介業者や売主等多数の関係者がいるため、自分で手続きして何かがあった場合には、自分以外の人間を巻き込むことになります。

登記手続きで何か問題があればそれは司法書士の責任となりますので、そういった意味でも司法書士に手続きを依頼するメリットかと思います。

まとめ

机の上にメガネ

土地家屋調査士による建物表題登記は、指定の旨の特約がなければ自分で手続き可能です。

また司法書士による権利の登記については、住宅ローンを使用せず現金で購入する場合であって、かつ指定の旨の特約が契約で付されていなければご自身で手続き可能でしょう。

ただし、仲介業者は嫌がることの方が多いかと思いますのでご確認ください。

手前味噌ですが、当事務所では要件を満たしているマイホーム購入の場合に限り、ご融資を利用しない場合には報酬66,000円(別途消費税)、ご融資を利用する場合には報酬99,000円(別途消費税)にて承っております。

上記以外の例外は一切ありません。

この記事の筆者

司法書士 樋口 亨(@toruhiguchi

東京司法書士会所属 登録番号7208号
司法書士法人リーガル・ソリューション 代表司法書士。
行政書士事務所リーガル・ソリューション 代表行政書士。
不動産仲介営業マン時代に司法書士試験合格。
都内の司法書士法人に転職し経験を積んだ後、司法書士法人リーガル・ソリューションを設立、同社代表社員就任。
開業以来、不動産登記手続き、不動産に関する訴訟手続き(賃貸トラブル、共有物分割請求、時効取得等)に特化。
保有資格は、司法書士、行政書士、宅地建物取引士、マンション管理士、管理業務主任者、競売不動産取扱主任者。

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