新築マンションの登記費用とは?相場と内訳について解説

登記費用

更新日:2021-09-25
新築マンションの購入を検討しているけど登記費用ってどのくらいかかるの?
不動産屋から提示された見積もりは適正金額なのかな?
新築マンションを買うときにどのような登記が必要なの?』 

この記事はそのような方向けに書いています。 

こんにちは、司法書士の樋口@toruhiguchiです。
私は東京都新宿区に本社を構える司法書士法人リーガル・ソリューションの代表司法書士で、不動産登記、不動産に関する訴訟手続きをメインに取り扱っています。 

司法書士 樋口亨
司法書士 樋口亨
今回は、新築マンションの登記費用について解説しています。 

司法書士報酬一律定額サービスバナー

新築マンションの登記費用とは?

新築マンション

新築マンションを購入する際には、主に次の3つの登記が必要になります。 

ただし、ローンの利用がない場合には、③の抵当権設定登記の手続きは不要です。 

登記費用の表不動産業者などから「登記費用」として案内される金額は、登録免許税などの実費と、専門家への報酬との合計額です。 

・登録免許税
登記を申請する際に、国に対して納める税金です。

①建物表題登記については、登録免許税はかかりません。

②所有権保存登記と③抵当権設定登記については、司法書士が事前にお預かりし、代わりに納付します。 

・報酬
①建物表題登記は土地家屋調査士が、②所有権保存登記・③抵当権設定登記は司法書士が、それぞれ手続きを行います。 

土地家屋調査士や司法書士の報酬は現在自由化されており、依頼する事務所によって報酬は異なります。

そのため各手続きの実費代と手続きする土地家屋調査士、司法書士の報酬の合算金額が登記費用の総額となります。

なお、マンションには、敷地権の登記がされているものと、されていないものとがありますが、これから建築されるもしくは建築中の新築マンションであれば、ほぼ間違いなく敷地権の登記がなされているものといって差し支えないでしょう。

そのため本稿でも、敷地権付きマンション(敷地権付区分建物)を前提として解説をしていきます。 

※マンションに関する用語について
・専有部分
マンションの住戸で、独立した所有権の対象となる部分です。

・共用部分
階段、廊下、エレベーターなど、マンションの居住者全員が共同で利用する部分です。
建物のうち、専有部分以外のところが共用部分になります。
専有部分とは異なり、独立した登記の対象とはなりません。

・専用部分
共用部分のうち、特定の人のみが使用する部分です。
バルコニー、ベランダ、1階の専用庭などがこれにあたります。

・規約共用部分 
本来であれば専有部分となるところであっても、集会所、事務所、物置などとして共同で利用する場合には、管理規約により共用部分とすることができます。これを規約共用部分といい、こちらについては登記をすることができます。

・敷地
マンションの底地で、専有部分の所有者全員の共有に属します。共有持分の割合は、管理規約に特別の定めがない限り、専有部分の床面積に応じて決まります。

・敷地権 
敷地について、専有部分の所有者が持っている権利です。通常は所有権ですが、賃借権や地上権の場合もあります。

そもそもなぜ登記が必要?

人差し指とポイント

建物表題登記には申請義務があり、申請を怠った場合には過料が科されます。 

他方、所有権保存登記や抵当権設定登記の申請は、義務とはされていません。

しかし、登記手続きをしないと、自分が所有者であるということを、当事者以外の第三者に対して主張することができません

また、所有権保存登記がされていないと、そのマンションを売却したり、担保権を設定したりすることができません

特に、マンションの購入にあたってローンを利用する場合には、抵当権設定登記が必須となりますので、所有権保存登記の手続きをしないと融資を受けることができません。

新築マンションの登記費用の相場はどのくらい?

はてなマークの積み木

それぞれの登記にかかる登録免許税は、次のとおりです。 

登録免許税の図表

※居住用の軽減措置について 

新築マンションを購入した際、一定の要件を満たす場合には、所有権保存登記や抵当権設定登記について、上記図表の通り登録免許税の軽減を受けることができます。 軽減の主な要件は、以下のとおりです。 

①マイホームついての購入・抵当権設定であること  

登記簿上の建物の種類が、「居宅」となっていることが必要です。 

住むための建物であっても、登記簿上で「共同住宅」「事務所」などと表示されている場合には、要件を満たしません。 

また、ローンの借主が抵当権設定者でない場合には、軽減を受けることができません。 

②登記簿上の専有部分の床面積が50㎡以上であること 

床面積にはいくつかの計算方法があるため、分譲時の資料と登記簿とで、数字が異なる場合があります。 

壁芯計算法と内法計算法

③所有権保存登記が、新築または取得後1年以内になされること  

※認定住宅について 認定住宅には、長期優良住宅と認定低炭素住宅とがあります。
簡単に言うと、長期優良住宅は、バリアフリー性、耐震性、省エネルギー性などに優れ、安全に長く住むことができる家です。
認定低炭素住宅は、二酸化炭素の排出を抑えるための対策がされた、環境に優しい家です。
認定住宅についての軽減措置を受けるためには、一定の性能を満たすことの証明書などが必要ですが、通常は不動産業者側が取得します。 

土地家屋調査士による表示の登記

マンションが完成すると、まずは土地家屋調査士が表示の登記を申請します。 

マンションは、㋐一つの大きな建物の中に㋑複数の住戸が入っており、それぞれについて表示の登記である建物表題登記の申請を行います。

㋐に関する表題登記を申請する際には、同時に、㋑すべての住戸に関する表題登記の手続きもしなければなりません。

例えば、1室が成約済みで、他の住戸がまだ分譲中の場合でも、1室のみ表題登記を申請するということはできず、㋐建物全体及び㋑すべての住戸について手続きを行う必要があります。

そのため、通常は、動産業者が土地家屋調査士に一括して表題登記を依頼します。 

なおこの建物表題登記の費用については、分譲マンション販売業者によって異なりますが、契約上建物表題登記の費用を買主の負担とする販売業者が多いです。

その場合の建物表題登記の報酬の相場は10万円前後です。

建物表題登記

土地家屋調査士による表示の登記のうち、建物表題登記が完了すると、登記簿に表題部と呼ばれる部分(下の〔登記記録の例〕のうち、赤い線で囲まれた部分)が記録されます。 

表題部を見ると、建物が建っている場所や建物の構造、床面積など、建物の物理的な状態がわかります。 

敷地権付きマンションは、一棟の建物の中に複数の住戸が入っており、また、敷地権に関する記載もされるため、一戸建ての場合に比べ、登記記録が複雑になります。 

敷地権付きマンションの表題部は、大きく分けて4つの部分から構成されています。

マンション全体に関する4つの登記

登記記録の例

司法書士による権利の登記

司法書士報酬一律定額サービスバナー

建物表題登記が完了したあと、司法書士により、所有権保存登記や抵当権設定登記の手続きが行われます

これらの登記は、登記簿の権利部(上の〔登記記録の例〕のうち青い線で囲まれた部分)に記録されます。 

権利部は、甲区と乙区の2つに分かれています。 

・甲区(所有権に関する事項) 

専有部分の所有者の住所や氏名などが記録されます。 

・乙区(所有権以外の権利に関する事項) 

所有権以外の、抵当権や賃借権などの権利について、権利者の住所氏名や権利の内容が記録されます。 

一戸建ての場合、土地と建物は完全に独立した不動産として扱われ、登記手続きもそれぞれについて行います。 

これに対し、敷地権付きマンションの場合、専有部分と敷地持分は一体のものとして扱われ、片方の権利だけを移転するということはできません。

登記についても、専有部分について手続きを行えば、敷地持分についても同様の手続きが行われたことになるため、土地について登記申請をする必要はありません。 

建売住宅を購入した場合

新築マンションを購入した場合

所有権保存登記

司法書士に支払う報酬の相場は25,000円から50,000円程度です。

建物についての所有権保存登記の登録免許税は、原則として、建物の固定資産評価額の0.4%です。  

ただし、居住用の軽減措置を受けられる場合には、税率が0.15%になります。 

また、居住用の軽減措置の要件を満たし、さらに認定住宅にも該当するときは、税率は0.1%になります。 

また、同時に敷地持分が移転するため、移転についての登録免許税も加算されます。 

次の例で、戸建ての場合とマンションの場合とで、登録免許税の計算の仕方を見てみましょう。 

(例) 

・建物価格1,000万円、土地(敷地持分)価格1,500万円 

・居住用の軽減措置を受けられるが、認定住宅ではない 

建売住宅を購入した場合

新築マンションを購入した場合

※建物の価格について 建物の固定資産評価額がある場合には、その価格です。
登記を申請する年の途中でマンションが建った場合には、まだ固定資産評価額がありません。
固定資産評価額は、毎年1月1日時点を基準にして算出されるためです。
この場合には、次の式で価格を求めます。
(1㎡あたりの価格)×(専有部分の床面積)=(建物の価格)
1㎡あたりの価格は、マンションの状況をもとに司法書士が計算し、法務局に認定された価格です。
そのマンションの構造や共用部分なども考慮されますので、価格はマンションごとに異なります。 

抵当権設定登記

司法書士に支払う報酬の相場は30,000円から70,000円程度です。

ただしペアローンの場合等、抵当権設定登記が2つ必要となる場合にはその分報酬がかかることが一般的です。

登録免許税は、原則として抵当権設定金額の0.4%です。 

ただし、居住用の軽減措置を受けられる場合には、税率が0.1%になります。

認定住宅に該当する場合も、税率は同じく0.1%です。 

例えば、抵当権設定金額が4,500万円で居住用の軽減を受けることができる場合、 

(4,500万円)×(0.1%)=(4万5,000円)

上記が登録免許税となります。

自分で手続きして節約出来る?

電卓と計算

登記手続きを自分で行い、登記費用を節約したいと思われる方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、以下の理由により、登記手続きを自分自身で行うことは、事実上、ほぼ不可能です。 

・建物表題登記

新築マンションの場合、不動産業者が指定する土地家屋調査士が手続きを行う旨、売買契約書などに記載されていることが一般的です。 

先に触れたとおり、建物表題登記は一括で申請する必要があるためです。 

・所有権保存登記 

こちらについても、通常は売買契約書などで司法書士が指定されています。 

新築マンションでは、短期間で多くの住戸について手続きをしなければならないことも少なくありません。

各住戸について共通の資料や情報もあり、一つの事務所が一括して手続きを行うほうがスムーズに進められるという事情があります。 

・抵当権設定登記 

抵当権設定登記に関しては、契約書による司法書士の指定があることは少ないと思われます。

しかし、通常は、所有権移転登記手続きを行う司法書士か、金融機関が指定する司法書士のどちらかが、手続きを代行します。

借主自身に手続きを任せることは、登記手続きにミスがあった場合に無担保となる可能性があり、金融機関にとってリスクが大きいためです。 

この記事の筆者

司法書士 樋口 亨(@toruhiguchi

東京司法書士会所属 登録番号7208号
司法書士法人リーガル・ソリューション 代表司法書士
行政書士事務所リーガル・ソリューション 代表行政書士
前職の不動産仲介営業マン時代に司法書士試験合格。
都内の司法書士法人に転職し経験を積んだ後、司法書士法人リーガル・ソリューションを設立、同社代表社員就任。
開業以来、不動産登記手続き、不動産に関する訴訟手続き(賃貸トラブル、共有物分割請求、時効取得等)に特化。
保有資格は、司法書士、行政書士、宅地建物取引士、マンション管理士、管理業務主任者、競売不動産取扱主任者。

どんな登記の内容でも司法書士報酬一律定額

当サイト経由でお問い合わせをし、ご依頼を頂いた場合司法書士報酬一律定額66,000円(税込72,600円)or99,000円(税込108,900円)でお手続きいたします。

詳細はコチラ

関連記事一覧